美容クリニックは「夜勤がない」「高収入である」との理由で人気の高い職場です。転職先として検討している人もいるのではないでしょうか。しかし、美容クリニックへの転職は難しいという噂を耳にするときもあります。40代以降の人は年齢も気になるもの。
美容クリニックでの仕事内容や必要な資格、40代の転職が難しいと言われる理由や、働くうえでのメリット・デメリットについて解説します。転職を考えている人はぜひ参考にしてください。
美容クリニックで働く看護師の働き方
美容クリニックは美容医療を専門に行う医療機関で、「美容外科」と「美容皮膚科」「美容脱毛」に分類されます。美容クリニックの看護師の仕事内容や、一般病棟看護師との違いを見ていきます。
- 美容看護師の仕事内容
- 美容看護師と病棟看護師との違い
それぞれ詳しく解説します。
1.美容看護師の仕事内容
美容クリニックの看護師の仕事内容は以下の通りです。
- 美容外科:二重まぶたや鼻の整形、脂肪吸引、豊胸手術など行います。看護師は医師の診療の補助、手術前後のケア、手術の介助を行います。
- 美容皮膚科:おもにレーザーを使用した脱毛・美肌治療などメスを使わない施術を行います。レーザー照射や美容注射を看護師が行う場合もあります。施術は数か月にわたり行うため、お客さまと接する時間が長いのが特徴です。
- 美容脱毛:レーザー照射による脱毛を行う、.美容医療業界で人気の高い施術です。看護師が直接施術を行うため、お客さまとの関わりは深くなります。
2.美容看護師と病棟看護師との違い
美容看護師 | 病棟看護師 | |
---|---|---|
対象者 | キレイになりたい人 自分の肌にコンプレックスがある人 | 何らかの病気がある人 怪我をしている人 |
対象者のとらえ方 | お客さま | 患者さん |
保険 | 基本自由診療 (一部保険診療となる状態もある。クリニックに要確認) | 保険診療 |
美容看護師と病棟看護師の大きな違いは、看護を提供する対象者です。美容看護師は「美容に悩みのある健康な人」であるのに対し、病棟看護師は「病気や怪我をしている人」になります。
美容看護師のおもな仕事は「キレイになりたい」「コンプレックスを改善したい」と考えるお客さまのサポートです。自由診療がメインとなり、提供するサービスや価格などをクリニック側で決定します。
そのため患者さんの希望にそった治療を行い、選んでもらう必要があるのです。「患者さん」ではなく「お客さま」となるため高いレベルの接客・接遇スキルが求められます。
病棟看護師のおもな仕事は、病気や怪我をしている人に対しての看護の提供です。身体面・精神面・社会面で患者さんをサポートしていきます。さまざまな診療科があり、特性にあった診療の補助や医療処置、日常生活の援助を行います。
24時間患者さんをサポートするため、信頼関係を構築できる接遇・コミュニケーションスキルが必要です。
40代看護師が美容クリニックで働くために必要な資格やスキル
美容クリニックと病棟看護師では仕事内容が異なります。美容クリニックで働くために必要な資格やスキルを紹介します。
1.必要な資格
美容クリニックで働くためには「正看護師資格」か「准看護師資格」があれば働けます。
正看護師資格は国家資格、准看護師資格は都道府県認可の資格であり、正看護師が有利です。美容クリニックにおける准看護師の求人数は少なめです。准看護師の人が美容クリニックで働きたいときは、募集要項をよく確認しましょう。
2.必要なスキル
美容クリニックで働くためには、看護師の基本的なスキルが身についていれば、特別なスキルは必要ありません。身につけておくと転職した際役立つのは以下のスキルです。
- コミュニケーションスキル
お客さまの悩みを引き出し、その人にあった提案ができるスキルです。安心して契約や施術をしてもらえるコミュニケーションスキルが欠かせません。40代はコミュニケーションは心配ないでしょう。
- 営業スキル
美容クリニックでは、施術以外に化粧品やサプリメントの販売を行っているところもあります。売上げによりインセンティブ(報奨金)が加算されるところもあり、成果はやりがいにもつながるでしょう。
病棟やクリニックで看護師をしてきた人は、営業に慣れていないため戸惑うときもあるかもしれません。お客さまの肌の状態や悩みに合わせ、無理のない提案をする必要があります。
- 臨床経験
美容クリニックでも採血や注射、点滴の技術が必要です。美容外科であれば、手術の介助や器械出しの経験が有利になります。一般病院やクリニックでの勤務経験のある40代看護師は、さまざまなスキルを身につけているため、自信をもってよいでしょう。
40代で美容クリニックへの転職が難しいと言われる理由
美容クリニックへの転職は難しいという話も聞きます。ここでは3つの理由を解説します。
- 求人数が少ない
- 年齢制限がある
- 新卒者の就職は難しい場合がある
それぞれ解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.求人数が少ない
医療・介護業界は慢性的な人手不足が問題であり、一般病院や診療所の求人数は多いです。しかし、美容クリニックの求人数は極端に少なくなります。人気の高い職場であるため競争倍率は高くなります。
マイナビ看護師の求人数は病院11863件、クリニック・診療所8569件、訪問看護ステーション10387件であったのに対し、美容クリニックは1035件でした。(※)求人数が少なめで人気の高い職場であるため採用倍率は高くなる傾向です。採用側は経営理念や雰囲気の合う人を採用したいと考えているため、応募する際は入念な企業研究が必要です。
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2.年齢制限がある
すべての美容クリニックに当てはまるわけではありませんが、年齢制限のあるところも存在します。大手の美容クリニックでは「長期勤続によるキャリア形成のため」という理由で、35歳以下の制限を設けているところが少なくありません。
一方、年齢制限を設けていない美容クリニックもあります。50代~60代のお客さまが多いクリニックでは、ベテラン看護師のスキルやコミュニケーション力が重宝されます。同じ世代であれば悩みに共感でき、よりお客さまのニーズに応えられるためです。
40代の看護師は、年齢制限のないクリニックを選びましょう。
3.新卒者の就職は難しい場合がある
美容クリニックへの就職、転職は臨床経験を求められるところも多く、新卒者は難しい場合があります。仕事内容には注射や採血、手術の介助があり、即戦力を求められるためです。
美容医療のニーズの高まりにより、最近では新卒者を採用しているクリニックもあります。新卒で美容クリニックへの就職を目指す場合は、新卒でも就職は可能か、教育体制は整っているかの確認が重要です。
40代看護師の転職先に美容クリニックをおすすめする理由5選
40代看護師の働き方で、美容クリニックをおすすめする理由は以下の5つです。
- 平均年収が高い
- 夜勤がないためプライベートと仕事を両立しやすい
- 残業が少ない
- 接客スキルが身につく
- 自分もキレイになれる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.平均年収が高い
美容クリニックは収入が高いと言われています。
令和4年賃金構造基本統計調査では、看護師平均月収は約35万円、年間賞与約86万円であり、年収は506万円です(※)。
ある大手クリニックでは、月収40万円に年間賞与と歩合がプラスされます。年収を考えると一般医療機関で働く看護師と同レベル、あるいはそれ以上の収入がのぞめます。
夜勤がないことを考えると、収入は高めと言えるでしょう。化粧品やサプリメントの販売力や、施術の提案力次第では収入アップが可能です。
2.夜勤がないためプライベートと仕事を両立しやすい
美容クリニックは夜勤がありません。そのためプライベートと両立がしやすいと言えます。家族との時間や趣味の時間の充実が叶うでしょう。
3.残業が少ない
病棟勤務は患者さんの緊急入院や急変対応、勉強会などで、残業になる場合が多くあります。美容クリニックは基本予約制であり、緊急入院などないため残業は少なめです。
4.接客スキルが身につく
「お客さま」が対象となるため、接客スキルが身につきます。多くのクリニックの中から選んで来てもらう必要があるため、より丁寧に接客しなければなりません。希望に寄り添い、キレイになれる提案をし、安心して施術を受けてもらえるような働きかけも重要です。
5.自分もキレイになれる
美容の知識が身につくため、自分の美容にも役立てられます。社員割引で施術をうけられたり、化粧品やサプリメントを購入できたりするクリニックもあります。お客さまと一緒に自分の美にも磨きをかけられるでしょう。
40代看護師の働き方で美容クリニックをおすすめしない理由4選
一方、40代看護師が美容クリニックで働くデメリット、おすすめしない理由もあります。
- クリニックによりノルマがある
- 新しい看護技術やスキルが身につきにくい
- 患者さんを「お客さま」として対応する必要がある
- 美容クリニックでの経験が看護師の経歴にならない場合がある
デメリットも参考にして、転職活動をしましょう。
1.クリニックによりノルマがある
クリニックの中には施術の契約や化粧品・サプリメントの販売ノルマがある場合もあります。達成しなければならないプレッシャーで、ストレスを感じる人がいるかもしれません。気になる人は情報収集や面接の際に確認しましょう。
2.新しい看護技術やスキルが身につきにくい
美容クリニックは美容医療に特化した医療機関であるため、新しい看護技術やスキルは身につきにくいと言えます。健康なお客さまに対しての看護を提供するため、病気や怪我の知識や看護技術にふれる機会は少なめです。
自分で積極的に学習したり、外部の研修に参加したりして知識やスキルを身につけることも大切です。
3患者さんを「お客さま」として対応する必要がある
患者さんを「お客さま」として対応するため、丁寧な接客スキルが求められます。美容の悩みを抱える人や美意識の高い人が対象であるため、クレームが出るときもあるかもしれません。
接遇研修に参加したり、勉強会を開催したりして、接遇・接客スキルの向上につとめる必要があるでしょう。
4.美容クリニックでの経験が看護師の経歴にならない場合がある
美容看護師の経験は、看護師の経験とみなされない場合があります。再度病院で働きたくなったとき、不利になる可能性はあります。
ただしどこも看護師不足であるため、採用してくれる職場もあるでしょう。美容クリニックへの転職を希望する場合は、今後のキャリアもあわせて検討する必要があります。
40代看護師でも働ける美容クリニックはある【理想の働き方を見つけよう】
美容クリニックの仕事は、お客さまの悩みを改善し、キレイになれるお手伝いができることが魅力です。
看護師の資格があれば働ける職場ですが、もともとの求人数は少なく、年齢制限のあるクリニックも存在します。
40代での転職が難しいところもあれば、年齢や経験が有利に働く場合もあります。
40代の看護師が美容クリニックへ転職を希望するときは、仕事内容やメリット・デメリットなどしっかり情報収集をし、納得してから応募しましょう。
情報収集するときは転職エージェントを登録し、相談してみることをおすすめします。